aurea mediocritas

日々の雑感や個人的な備忘録

星の王子さまについて

⑴【星の王子様は子供向けの作品なのか?】

 


私は、『星の王子さま』という作品が子供向けの絵本だと思ったことがマジで一度もない。何度読んでも、「これは当然のことながら大人に向けて書かれている作品だ」という印象を全体的に受けるし、「大人も子供も楽しめる」のかどうか分からない。もし仮にそうだとしても、その場合、大人と子供では、まったく別の意味で「楽しんでいる」ということになるだろう。

 


というのも、高度な隠喩と象徴や「含み」「におわせ」が随所に張り巡らされているとも取れる作品であるがために、そういう比喩が何を匂わせているのかが、まだ分からないような子供は、むしろ締め出されているようにさえ感じる。(たとえば、塚崎幹夫氏は、『星の王子さまの世界』(中央公論社)の中で、ウワバミの背後にドイツの軍事行動を見ていたり、3本のバオバブの木を放置しておいたために破滅した星が出てくるが、あれは、1.ドイツと2.イタリアと3.日本の枢軸側の3国(=それぞれ1.ナチズムと2.ファシズムと3.日本の全体主義)に適切な対応をしなかったことが背景にあるのではないかとしている。また、王様の星(第10章)で、王が、星の王子様を大使に任命したところで章が終わっているが、あれはサン=テグジュペリ自身が、ナチスドイツの傀儡政権ヴィシー政府から文化大使に任命されていたことが背景にあるとしている。この作品が書かれた戦時下で、ニューヨークに亡命中の作者から見えた特異な世界状況がこの作品内に反映されている可能性は大いにある。同氏は、「現下の世界の危機にどこまでも責任を感じて思いつめるひとりの「大人」(une grande personne)の、苦悩に満ちた懺悔と贖罪の書」であり、「この本が素晴らしいのは、単に詩的、哲学的、文学的に素晴らしいというだけではなく、この本の中には作者の死の決意と、親しい人たちへの密かな訣別が秘められているからなのだ。死の決意に裏付けされた人類の未来への懸命な祈りの書だからだ」としている。他にも、「花」はサン=テグジュペリの妻コンスエロだとか、王子の星にある第一の活火山は愛で、第二の活火山は希望で、第三の休火山は信仰だという説さえある。この作品全体をサン=テグジュペリの「遺書」だと取ることさえ可能。)だから、王子の対話シーンなんか、むしろ禅問答みたいなのだ。例えば、次の一文を読んでほしい。

 

 

 

Et, avec un peu de mélancolie, peut-être, il ajouta :

– Droit devant soi on ne peut pas aller bien loin.(第3章)

そして多分、少しの憂鬱をこめて、王子様は付け加えた。

「まっすぐ目の前にとはいえ、人はそんなに遠くへは行けるもんじゃないんだよ。」

 


これは、「ヒツジをロープでちゃんと繋いでおかないと何処へでも行ってしまうよ」と言われた王子様が、飛行士(すなわち語り手)に応答する場面なのだが、主語がもはやヒツジではなく、フランス語の一般主語onに途中から、すり替わっているため、これはむしろ、人間という存在者についての言及になっているのだ。他にも、こんなのもある。

 


– Où sont les hommes ? reprit enfin le petit prince. On est 

un peu seul dans le désert…

– On est seul aussi chez les hommes, dit le serpent(17章)

「人間たちはどこ?」王子はやっと口を開きました。

「砂漠にいると、少しさびしいよね。」

ヘビは答えて言いました。

「人間たちのところにいたって、やっぱりさびしいさ。」

 

 

 

↑ここでは、社会と砂漠が重ねられているのだ。人間は本質的に孤独だと言われているとも取れる。こういう孤独って、子どもにも分かるんだろうか。つまり、サン=テグジュペリさんによって、読者として想定されている人々には、かなりの人生経験と失敗の経験などが前提されており、象徴を使って「ああ、ここは字義通りに取るのではなくて、人生のこういう局面について言われているのだなぁ」という勘ぐりが出来ることが暗に期待されているのではないだろうか。

 


だから、私はこの作品を子供向けの作品だと思ったことがマジでまったくないけれども、「ナチスとの戦争で北アフリカ戦線に向かう数週間前に、死を覚悟した、ひとりのフランス人作家が、同時代の大人たちに向けて反省を促すために書いた手紙」だと思ったことは何度かある。

 


他にも、「どう考えても、子供向けではないだろ」ということを確信する箇所がいくつも思い当たるのだ。たとえば、次の箇所を見てほしい。(翻訳は私がつけた。市販されている子供向けの絵本の訳だと、かえって裏の意味を読み取るのが難し過ぎるからである。)(私の訳は大人向けである。大人向けの訳をつけるほうがずっと簡単であって、子供向けの訳を作るというのは、めっちゃ難しいことなので、やっている人は本当にすごいと思う。)

 


−Je me demande, dit-il, si les étoiles sont éclairées afin 

que chacun puisse un jour retrouver la sienne. Regarde ma planète. Elle est juste au-dessus de nous… Mais comme elle est loin !

– Elle est belle, dit le serpent. Que viens-tu faire ici ?

– J’ai des difficultés avec une fleur, dit le petit prince.

 Ah ! fit le serpent.

Et ils se turent.(17章)

王子様は次のように言いました。「星たちが輝いているのは、みんながそれぞれ自分の星をいつか見つけられるようにするためなのかどうかを僕は考えているんだ。ねぇ、僕の星を見てみてよ。僕の星は、僕たちのちょうど真上にきている。でも、あの星(elle)は、なんて遠いんだろう。」

「その星(elle)、綺麗だね。でも、ここへは何をしに来たんだい?」ヘビは聞きました。

「ちょっと花とトラブルがあってね。」

王子様はそう言いました。

「あぁ!」とヘビは言いました。

それからふたりは、黙りました。

 

 

 

ここの文章で、蛇と王子様は、なぜ黙りこくるか分かるだろうか。蛇なんか、「ああAh !」と言ってから、もう何も言わなくなるのである。なぜだろうか。ヘビは、王子の傷心旅行のわけを瞬時に察したからである。ヘビは、王子様が地球へ自殺しに来ていると瞬間的に理解したのだ。

 


ヘビは偶然にも良質な毒を自らに備えていたし、王子は遠い女の元へ、帰らねばならなかった。そのためには、肉体が重過ぎた。ヘビは自分が王子の自殺を手伝ってやらねばならないと理解したのである。王子がいずれは、次のように聞いてくることを、この出会いの時点で、この王子様の自殺からちょうど一年前の時点で、ヘビはもう知っていたに違いない。(ちなみに、ここで、「自分の星が真上にある」というのも伏線である。なぜなら、一年後に、またちょうど自分の星が真上に来る日、王子様は自殺をするからだ。)だから、ヘビは次のように匂わせるのだ。

 


Je puis t'aider un jour si tu regrettes trop ta planète.(17)

もし君がいつか、とても故郷が懐かしくなったら、俺が君を手伝ってやるぜ。

 


Je puis t'emporter plus loin qu'un navire.(17)

俺は君を船よりも遠くへ運んでやるぜ。

 


Celui que je touche, je le rends à la terre dont il est sorti.(17)

俺は俺が触るものを、そいつが出てきた元の大地に送り返してやるのさ。

 


なんてかっこいい死のメタファーだろうか。蛇は死である。「死」が王子に語りかけたのだ。終盤で、自らの死を覚悟した王子様は、死に、次のように応える。

 


Tu as du bon venin ?(26章)

君の毒は、苦しまずに死ねるような毒かい?

 


Je ne peux pas emporter ce corps-là. C'est trop lourd.(26章)

この肉体を持ってはいけない。重過ぎるんだ。

 


明らかにこの作品は大人向けである。

 

 

 

⑵【サン=テグジュペリについて】

 


サン=テグジュペリは1900年6月29日にリヨンで生まれた。父親はリムーザン地方の貴族出身で、保険会社に勤めていた。1904年には、五人の子どもを残して父親が死亡。母親は、南方プロヴァンス地方の貴族の出身で、絵画の才能を持った女性だったらしい。母親は夫の死後、子どもたちを連れて故郷へ帰り、祖父や大叔母の所有地、ラ・モールの城、サン=モーリス・ド・レマンスの城で子どもたちを育てた。この母親に対して、サン=テグジュペリは終生深い愛情を抱いていたらしい。サン=テグジュペリは二歳年下の弟が15歳で死に、その死の間際に、死の床で、弟と話をしている。サン=テグジュペリは、海軍兵学校の入試に失敗後、1921年には、兵士としてドイツ国境に近いストラスブールという都市の第二飛行連隊に入隊し、操縦士となるための訓練を受け、民間飛行免許を取得した。そして軍用機操縦免許も取得して予備少尉になる。しかし、1923年に事故で怪我をして除隊。1926年には、処女作『ジャック・ベルニスの脱出』の一部を「飛行家」というペンネームで雑誌「銀の船」に発表し、ラテコエール航空会社に就職することによって、もう一度パイロットに戻ることになった。飛行士としてのキャリアは、トゥールーズとカサプランカの間と、カサブランカダカールの間の定期郵便飛行を経験し、中継基地の飛行場長をつとめ、アエロポスタル・アルヘンティーナ社の支配人としてブエノス・アイレスに赴任し、フランスから南米にいたる路線のカサブランカとポール・テチエンヌの間の飛行、ラテコエール飛行機製造会社のテスト・パイロットとして、その後には、エール・フランスの宣伝部勤務などをつとめた。

1931年に、サン・サルヴァドル出身のコンスエロ・スンシンと結婚、35年には、『パリ・ソワール』紙の特派員としてモスクワへ行ったり、パリとサイゴンの間の飛行記録更新をめざしての飛行中にリビア砂漠に不時着したりした。(ちなみに、星の王子さまの語り手が不時着したのはサハラ砂漠である。)1939年には、『人間の土地』にアカデミー小説大賞が与えられたが、この年の9月に第二次大戦が勃発し、予備大尉として戦争に召集された。フランスがナチス・ドイツに占領されたので、1940年の6月に休戦調印がされ、動員解除を受けると、サン=テグジュペリは、アメリカへの亡命を決心し、1941年の1月にニューヨークへ着いた。サン=テグジュペリがニューヨークに到着する少し前、1941年の12月8日に、日本は真珠湾を攻撃しており、これもあって、ヨーロッパの窮状を傍観していたアメリカは、ヨーロッパでの参戦に踏みきった。1942年の11月、連合軍の北アフリカ上陸作戦成功のニュースを喜んだサン=テグジュペリは、もう一度戦おうと決心し、1943年の5月に、北アフリカへ向かう軍用船に乗り込み、アルジェに到着した。このとき、サン=テグジュペリは43歳で、操縦士として実戦に参加することについて、アメリカ軍側からは反対が出た。彼はすでに何度も事故を起こしてきたという事実があり、サン=テグジュペリは、優秀な飛行士とは言えなかったのだ。それでもサン=テグジュペリ自身が執拗に求めたので、飛行を許された。しかし、すぐに事故を起こしてまたも予備役に編入させられてしまう。それでも、また頼み込んで偵察飛行を続ける許可を得て、サルディニア島のアルゲーロ基地にある2-33偵察飛行大隊に復帰した。その後、コルシカ島のボルゴ基地に移動し、1944年7月31日、その基地を飛び立った後でついに、消息を絶った。コルシカ島からフランス本国への偵察飛行のために飛び立ったサン=テグジュペリは、南仏のアゲー沖で、ドイツ軍の戦闘機に撃墜されたそうだ。

 


星の王子さま』は1943年にニューヨークで出版されたのだが、サン=テグジュペリは、1943年の5月には戦線復帰のために北アフリカ戦線へと旅立っているので、この作品の成功をサン=テグジュペリ自身は知ることがなかった。

 


星の王子さま』の出版部数は日本だけで600万部、全世界では8000万部にのぼる。Le Petit Princeというフランス語に対する「星の王子さま」という訳語は内藤濯の1953年の岩波書店版の翻訳における発明だ(野崎歓訳だと『ちいさな王子』になっている。ただ、アプリヴォワゼすると定冠詞になるという構造を考えると、この原題に定冠詞が付いているのは、何かしらの深い意味があるのではと考えることもできる。つまり、王子様と飛行士との間にうまれた絆をこの定冠詞が表しているのではという可能性がある。)。

 


星の王子さま』は、前述のとおり、1942年の第二次世界大戦のさなかに、アメリカに亡命していたサン=テグジュペリがニューヨークで書いたものだ。サン=テグジュペリの友人たちが、祖国フランスから遠く離れた土地で失意の中にあったサン=テグジュペリに、子どもたちへのクリスマスプレゼントになるような本を書くことを勧めたのだ。(結局、クリスマスまでには執筆が間に合わなかった。)1943年に、英語版とフランス語版がニューヨークで出版(フランス語版の初版第一刷はレイナル&ヒッチコック社から刊行された)され、その1週間後、1943年4月に、サン=テグジュペリナチスドイツと闘うために北アフリカ戦線に、ニューヨークから船に乗って、出発した。(前述の通り、すでに戦闘機の搭乗員として年齢制限は超えていたのだが、それを無視して困難な出撃を重ねたわけである。)

 


サン=テグジュペリは英語が苦手で、しかもアメリカが嫌いだったらしい。例えば、「ビジネスマン」という登場人物の名前だけが作中で英語スペルなのだが、アメリカ資本主義文明に対するサン=テグジュペリの風刺かもしれない。

 

 

 

⑶【邦訳があるサン=テグジュペリの作品】

 


『南方郵便機』(1929)、『夜間飛行』(1931)、『人間の土地』(1939)、『戦う操縦土』(1942)、『青春の手紙』(1923-1931)、『城砦』(1948)、『ある人質への手紙・母への手紙』(1943)などは邦訳が出ている。

 


サン=テグジュペリの処女作『南方郵便機』は1929年。『夜間飛行』はフェミナ賞、『人間の大地』はアカデミーフランセーズ小説大賞に選ばれている。1942年には戦争小説『戦う操縦士Pilote de guerre』も書いている。

 

 

 

⑷【『星の王子さま』という作品の構成】

 


星の王子さま』は、始めにひとつの献辞がついていて、本文は27章構成になって、あとがきで終わっている。(ちなみに、とくに読みごたえがあるのは第21章である。第21章だけでも読んだ方がいい。ちなみに、一番長い章は第26章である。あと、第6章だけに唯一、地の文の書き手(=6年後の飛行士)が王子さまに語りかけるという場面がある。第6章以外の箇所では、地の文の書き手は過去の描写に徹しているのだが。)そして、40枚ほどの非常にデザイン性の高い超有名な挿絵はサン=テグジュペリ自身が描いたものだ。要するに、『星の王子さま』は、①冒頭の「献辞」、②27章分割の本文、③「あとがき」、④挿絵という4つの構成要素から成る。

 


27章の構成とテーマは以下のようになっている。

 


第1章:語り手が6才のとき

第2章:不時着して2日目の朝の出会い(6年前のこと)

第3章:王子様はよその惑星からきた。

第4章:小惑星B612の話

第5章:不時着してから3日目、バオバブの話

第6章:不時着してから4日目、夕陽の話

第7章:不時着してから5日目

第8章:バラの花(カットバック始まり)

第9章:バラとの別れ

第10章:王様の惑星

第11章:自惚れ屋の惑星

第12章:酔っ払いの惑星

第13章:ビジネスマンの惑星

第14章:点灯夫の惑星

第15章:地理学者の惑星

第16章:王子が地球にくる

第17章:ヘビに会う(王子が噛まれる1年前)

第18章:人間には根っこがない

第19章:やまびこと会話をする

第20章:5000本のバラを見つける

第21章:キツネと会う

第22章:転轍技師と会う

第23章:クスリ売りと会う(カットバック終わり)

第24章:不時着してから8日目(井戸探し)

第25章:不時着してから9日目(ヒツジの絵に口輪を描く約束を果たす)

第26章:不時着してから10日目の夕暮れ(ヘビに噛ませる王子様)

第27章:不時着から6年後。語り手はまだ誰にも王子のことを話していない。(語り手は口輪の絵にに革紐を添えるのを忘れたことに気づく)

 


↑このとおり、全体が全て6年後のパイロットの回想なのに、その回想の中で、長い長いカットバック(8~23章はすべて回想)が途中に入るので入れ子構造となり、時系列がとても分かりにくいのだが、王子様は、時系列だと次のような順序でキャラたちと出会い、会話をしている。王子のバラ→王様→自惚れ屋→酔っ払い→ビジネスマン→点灯夫→地理学者ヘビ→無名の花→こだま→5000本のバラ→キツネ→転轍技師→薬売り→パイロット→ヘビに噛ませて星に帰る。

 

 

 

⑸【『星の王子さま』のあらすじ】

 


この作品の舞台は終始、砂漠である。なぜ砂漠なのだろうか。当時の時代情勢(1943)を考えると、世界各国が相互にいがみ合っていて、まさに不毛の砂漠のようであったともいえる。自己中心的な大人たちの、殺伐とした心が社会という砂漠を構成していたともいえるかもしれない。もしそうだとすれば、飛行機の上空から砂漠を眺めていたサン=テグジュペリは、「砂漠が美しいのはどこかに井戸を隠しているからだよ。」という王子の言葉に託した人間社会への希望を感じとることができるかもしれない。あるいは単に、砂漠に不時着したという経験から来た設定だろうか。分からない。

 


とにかく、『星の王子さま』の冒頭は、レオン・ヴェルトへの献辞(dédicace)で始まる。左翼革命思想の持ち主だったレオン・ヴェルトさんはサン=テグジュペリと1935年に知り合った。「この本をひとりの大人に捧げることを、子供たちには許してほしい」という言葉で始まるのだ。レオン・ヴェルトはサン=テグジュペリよりも22才歳上のユダヤ系フランス人である。ということは、この献辞は、祖国フランスで戦っている同胞に宛てたものだ。サン=テグジュペリはこの本を子供たちではなく大人に捧げてしまったことについての弁解を3つ(①レオン・ヴェルトはサン=テグジュペリの世界で一番の大親友だから。②レオン・ヴェルトは、子供の本でさえも理解してくれるから。③レオン・ヴェルトはいま飢えと寒さに苦しむ祖国フランスにいるから。)を述べたあと、それでも読者が納得しないなら、「レオン・ヴェルトも昔は子どもだったのだから許してくれ」と書いている。(この献辞が、本当に子どもに宛てられているとしたら、子供にとって、冒頭からいきなり難し過ぎるのではないだろうか。)

 


さて、語り手が6歳のときのこと。絵本の中の、獣を飲み込む大蛇「ボア」のデッサンを見て感動した語り手は、自分も似た絵を描いて、大人たちに見せて、怖くないか?と聞いてみたんだが、しかし、その絵は大人たちには帽子にしか見えなかったという有名なエピソードが語られる。(第1章)

 


この件で、将来画家になる夢を諦めて飛行機のパイロットになった語り手は、現在から6年前のこと、サハラ砂漠に不時着して、王子様と遭遇する(第2章)。語り手に飲み水は1週間分しかなかった。(つまり王子と語り手とのこれからの対話は、1日目から、水が尽きる8日目までに渡って展開されるというわけだ。)

 


ある日王子の星にバラが咲く(第8章)。バラを初めてみた王子は感激して世話をするがバラは強気で王子につれなかった。実はバラは王子への愛を素直に表せなかったのだ。この、王子さまに守られたくて、美しくて、気高くて、気難しくて、見栄っ張りの薔薇は、わがままでありながら、はかなく、素直になれず、そして、王子さまに愛されてゆく。 サン=デグジュベリの愛妻コンスエロか?と考えられているが、バラのモデルは、愛妻コンスエロであるという説と、サン=テグジュペリの母がモデルであるという説と、かつての婚約者であるルイーズ・ド・ヴィルモランがモデルであるという説があるが、別に特定する必要もないだろう。

 


王子はバラとトラブって、傷ついて、星々をめぐる旅に出る。精神を明らかに病んだ大人たちを見て巡る。やがて王子は、強い存在だと思っていたバラが、いつ枯れてしまうかも分からないような、そういう、はかない存在であったことを地理学者によって知らされる。(地理学者のいる6番目の星だけは、他の星よりも10倍大きい。この6つ目の星で出会った地理学者に、王子は、次は地球に行くとよいと教えられるのだ。)

 


そういう経緯で、7つめの星は地球。(ちなみに、王子さまが地球に来て最初に出会うのは毒ヘビである。)その地球で王子は5千本のバラが咲いている庭を目にし、世界にひとつしかないと思っていたバラが無数にあることを知る。自分が愛したバラが、ワンオブゼムに過ぎなかったと知り、王子は悲しむ。するとそこで、狐が王子に声をかける。狐は王子に、「絆は時間によってこそ育まれるのだよ」と言う。共に過ごした時が、相手をかけがえのない唯一の存在にする(=アプリヴォワゼする)のだとキツネは言う。アプリヴォワゼの原義は、「privéなものにする」、つまり、「プライベートなものにする」という意味。

 


王子は、自分もバラも相手の気持ちになっていなかったものだから、傷つけ合うことになったのだと悟る。そして毒蛇に自分をかませて、自分の星である小惑星B612に戻っていく。

 


ちなみに、この「小惑星 B612号」は、語り手にによると、1909年にトルコ人天文学者によって見され、国際天文学会で発表されたものだったそうだ。ところが、その学者が民族衣裳を着ていたので、誰も彼の発表を信じなかった。ところが、1920年に、ヨーロッパ風の服を着て発表しなければならないという制度が新しく出来たために、同じ星についての発表を、ヨーロッパ風の服装で行うと、今度は信じてもらえたという設定になっている。(これが、サン=テグジュペリのいう大人"grandes personnes"である。)

 


⑹【翻訳するという行為が孕む問題について】

 


翻訳は考えものである。なぜなら、例えば、以下の一番有名な箇所をみてみてほしい。

 


Adieu, dit le renard. Voici mon secret. Il est très simple: on ne voit bien qu'avec le cœur. L'essentiel est invisible pour les yeux.(21)

永遠にお別れだな。最後に、これが俺の秘密さ。とてもシンプルなんだ。心で見たときしか、よく見えない。大切なものは、目に見えないんだ。

 


↑ここが、英訳だとどうなるかというと、It is only with the heart that one can see rightly.というように、強調構文になってしまって、on ne voit bien qu'avec le cœur.というフランス語の8単語が、英語だと11単語になってしまっているからだ。しかも理屈っぽい。フランス語のシンプルさがない。

 


他にも致命的な翻訳による欠陥がある。それは、une fleur とla fleur の決定的な違いが出せないという点だ。ここは『星の王子さま』という作品にとって本当に致命的である。なぜなら、この作品のタイトルはle petit prince であって、定冠詞がついているからだ。つまり、実はこの作品中で、既に話者がアプリヴォワゼしている対象を表現するときには定冠詞が使われ、まだアプリヴォワゼされていない対象を表現するときには不定冠詞が使われているのである。次の箇所を参照してほしい。

 


Comme ses lèvres entr’ouvertes ébauchaient un demisourire je me dis encore :  « Ce qui m’émeut si fort de ce petit prince endormi, c’est sa fidélité pour une fleur, c’est l’image d’une rose qui rayonne en lui comme la flamme d’une lampe, même quand il dort… » (24)

 


王子様の少し開いた唇がほのかな笑いをかたどったので、私は次のように考えてしまった。「ねむる王子様のなにがこんなに私を感動させるのかといえば、それはある花への忠誠心なのだ。あるバラのイメージが王子様の中にあって、彼が眠っているときでさえ、ランプの炎のように光を放っている。」

 


ここでは、語り手は王子様のバラをアプリヴォワゼしていないので、バラは定冠詞ではなく不定冠詞になっている。

 


あと、王子さまは「僕」キツネは「俺」、語り手は「私」、バラは「あたし」という感じで、一人称を使い分けると訳しやすくなる。日本語は、ある意味で、この点でとても便利であるとも言える。

 

 

 

 

 

 

⑺【研究書(年代順)】

研究書はフランス語でも日本語でも死ぬほど出ていて、そのほんの一部は以下の通り。他にも、怪しいものまで、無数にある。

 


ルネ・ドランジュ著、山口三夫訳『サン=テグジュペリの生涯』(みすず書房)、1963年。

内藤濯著『星の王子とわたし』(文藝春秋)、1968年。

山崎庸一郎著『サン=テグジュペリの生涯』(新潮選書)、1971年。

内藤濯『未知の人への返書』中央公論社、1971年。

アンドレ・ドヴォー著、渡辺義愛訳『サン=テグジュペリ』(ヨルダン社)、1973年。

Yves Monin.  L'ésotérisme du Petit Price de Saint-Exupéry (Nizet, Paris, 1976)

内藤濯『落穂拾いの記』岩波書店、1976年。

内藤初穂「童心の日記―序に代えて」、1984年。

山崎庸一郎『星の王子さまの秘密』彌生書房、1984年。

稲垣直樹『サン=テグジュペリ 人と思想』清水書院、1992年。

ジョン・フィリプス著、山崎庸一郎訳『永遠の星の王子さま』(みすず書房)、1994年。

山崎庸一郎監修『星の王子さまのはるかな旅』(求龍堂)、1995年。

山崎庸一郎訳編『サン=テグジュペリの言葉』(彌生書房)、1997年。

ルドルフ・プロット『星の王子さまの心』(パロル舎)、1997年。

小島俊明『改訂版 おとなのための星の王子さま――サン=テックスを読みましたか』近代文芸社、2000年。

柳沢淑枝『こころで読む「星の王子さま」』成甲書房、2000年。

山崎庸一郎『『星の王子さま』のひと』新潮社、2000年。

 


水本弘文『「星の王子さま」の見えない世界』大学教育出版、2002年。

内藤濯『星の王子 パリ日記』グラフ社、2003年。

内藤初穂「『星の王子さま』備忘録その一」岩波書店、2003年。

片木智年『星の王子さま学』慶應義塾大学出版会、2005年。

藤田尊潮『『星の王子さま』を読む』八坂書房、2005年。

三野博司『『星の王子さま』の謎』論創社、2005年。

塚崎幹夫著『星の王子さまの世界』(中央公論社)、2006年。

加藤晴久『自分で訳す「星の王子さま」』三修社、2006年。

内藤初穂『星の王子の影とかたちと』筑摩書房、2006年。

鳥取絹子星の王子さま 隠された物語』ベストセラーズ、2014年。

安冨歩『誰が星の王子さまを殺したのか――モラル・ハラスメントの罠』明石書店、2014年。

 

 

 

 

 

 

 


⑻【付録、あるいは名句の抜粋】

 


()内の数字は、その名句が登場する原典内の章番号である。私が訳してみたが、誰かが読む必要はまったくない。

 


Toutes les grandes personnes ont d'abord été des enfants.(まえがき)

どんな大人たちも、初めは子どもだったのだ。

 


Lorsque j’avais six ans j’ai vu, une fois, une magnifique image, dans un livre sur la Forêt Vierge qui s’appelait « Histoires Vécues ». Ça représentait un serpent boa qui avalait un fauve. Voilà la copie du dessin.(1)

私が6才のとき、一度だけ、自然のままの森についての『本当の物語たち』という本の中で、素晴らしい挿絵を見たんだ。その挿絵は、ボア(=南米やマダガスカルに生息する王蛇科の大蛇の名前)というヘビが、ケモノを飲み込んだところの絵だった。これがその絵の模写なんだ。

 


J'ai ainsi vécu seul, sans personne avec qui parler véritablement.(2)

私はこんなふうに孤独に生きてきた。心から話し合える友人もなく。(主語が省略されて不定詞のまま動詞が置かれている文)

 


Dessine-moi un mouton.(2)

僕に去勢されたヒツジの絵を書いてよ。

 


Tu vois bien...ce n'est pas un mouton, c'est un bélier. Il a des cornes.(2)

よく見て。これは去勢されたヒツジじゃないよ。それは去勢されてない牡ヒツジだよ。ツノがあるでしょ。

 


De quelle planète es-tu?(3)

あなたはどの星から来たの?

 


Comment! Tu es tombé du ciel !(3)

なんだって!あなたは空から落ちてきたの?

 


Alors, toi aussi tu viens du ciel!(3)

すると、君も空からやって来たんだね!

 


Où veux-tu emporter mon mouton?(3)

僕のヒツジをどこへ連れて帰ろうっての?

 


Ça ne fait rien, c'est tellement petit, chez moi!(3)

そんなの構わないさ。ぼくの星はとっても小さいんだから。

 


Il hochait la tête doucement tout en regardant mon avion.(3)

彼、私の飛行機をまじまじと見つめて、静かに首を振った。

 


Sa planète d'origine était à peine plus grande qu'une maison!(4)

王子さまの故郷の惑星は、一軒の家よりわずかに大きいくらいの大きさしかなかったんだ。

 


J'ai de sérieuses raisons de croire que la planète d'ou venait le petit prince est l'astéroïde B 612. Cet astéroïde n'a été aperçu qu'une fois au télescope, en 1909, par un astronome turc.(4)

私にはちゃんとした理由があって、王子様の星は小惑星B612であると思う。この小惑星は、一度だけトルコの天文学者によって1909年に、望遠鏡で発見されたことがある。

 


Quel âge a-t-il? Combien a-t-il de frère? Combien pèse-t-il? Combien gagne son père?(4)

その子の年齢は?その子の兄弟は何人?その子の体重は?その子のお父さんはどのくらい稼ぐの?

 

 

 

Il faut s’astreindre régulièrement à arracher les baobabs dès qu’on les distingue d’avec les rosiers auxquels ils ressemblent beaucoup quand ils sont très jeunes.(5)

バオバブは、まだ小さい時には、バラにとてもよく似ているんだけど、そのバラとの区別がつくようになったらすぐに、定期的に引っこ抜くように努めなければならないんだ。

 


Enfants! Faites attention aux baobabs!(5)

子供たちよ!バオバブの不始末には気をつけなさい!

 


–Tu sais… quand on est tellement triste on aime les cou-

chers de soleil…

– Le jour des quarante-trois fois tu étais donc tellement 

triste ?

Mais le petit prince ne répondit pas.(6)

「知ってた?人はとても悲しい時、日没を愛するものなんだ。」

「てことは、44回も日没を見た日、君はそれほどまでに悲しかったってこと?」

王子様は何も答えませんでした。

 

 

 

Ah ! petit prince, j’ai compris, peu à peu, ainsi, ta petite vie 

mélancolique. Tu n’avais eu longtemps pour distraction que la 

douceur des couchers de soleil. (6)

ああ、王子さま。私はこんなふうに、少しずつ分かってきたんだ。君のメランコリックでささやかな生活を。君は長い間、穏やかな夕暮れだけが、君の気晴らしだったんだね。

 


J'aime bien les coucher de soleil. Allons voir un coucher de soleil.(6)

僕は夕陽が好きなんだ。ねえ夕陽を見に行こうよ。

 


En effet. Quand il est midi aux États-Unis, le soleil, tout le 

monde le sait, se couche sur la France. Il suffirait de pouvoir 

aller en France en une minute pour assister au coucher de soleil. Malheureusement la France est bien trop éloignée. Mais, sur ta si petite planète, il te suffisait de tirer ta chaise de quelques pas. Et tu regardais le crépuscule chaque fois que tu le désirais…(6)

実際、アメリカ合衆国が正午のとき、ご存知のとおり、フランスでは日没だ。もし、1分間でフランスに行くことができたならば、日没に立ち会うことができるだろう、しかし残念ながら、祖国フランスはあまりにも遠すぎる。でも、もし王子さまのとっても小さい星でならば、イスを何歩分か動かすだけで、それができてしまう。だから王子さまは、それを望むたびに、夕暮れを見ることができた。

 


– Il y a des millions d’années que les fleurs fabriquent des épines. Il y a des millions d’années que les moutons mangent quand même les fleurs. Et ce n’est pas sérieux de chercher à comprendre pourquoi elles se donnent tant de mal pour se fabriquer des épines qui ne servent jamais à rien ? Ce n’est pas 

important la guerre des moutons et des fleurs ? Ce n’est pas plus sérieux et plus important que les additions d’un gros Monsieur rouge ? Et si je connais, moi, une fleur unique au monde, qui n’existe nulle part, sauf dans ma planète, et qu’un petit mouton peut anéantir d’un seul coup, comme ça, un matin, sans se rendre compte de ce qu’il fait, ce n’est pas important ça !

Il rougit, puis reprit :

– Si quelqu’un aime une fleur qui n’existe qu’à un exemplaire dans les millions et les millions d’étoiles, ça suffit pour qu’il soit heureux quand il les regarde. Il se dit : « Ma fleur est là quelque part… » Mais si le mouton mange la fleur, c’est pour lui 

comme si, brusquement, toutes les étoiles s’éteignaient ! Et ce n’est pas important ça !(7)

100万年前から、花たちはトゲを身に纏ってる。100万年前から、ヒツジはそれでも、その花たちを食べてしまう。なぜ、花たちは、そんなに苦労してまで、その「なんの役にも立たない」トゲを身にまとうのか、それが何故かを理解することは誠実なことじゃないっていうの?ヒツジたちと花たちとの戦争の方は、重要なことじゃないっていうの?それよりもむしろ、あの、太った赤ら顔のおじさんの金勘定のほうが、もっと誠実なことで重要だっていうの?もし、世界にたったひとつしかない花、ぼくの星のほかにはどこにも咲いていない花、ちいさな羊が1匹いれば、その羊は自分のしてることがなにかも気づかずに、朝、一撃で食べ尽くしてしまうことができるような、そんな花がぼくにはあるって僕にはわかってたとしても、それでもこのことが、大切なことじゃないっていうの?」

王子さまはまっ赤になって、続けた。

もしも誰かが、100万の星と100万の星を足して200万の星のなかにさえ、似ているのしか見つからないような、一輪の花を好きになったなら、その幸せなひとにとって、星空をながめるだけで十分なんだ。『あのどこかに僕の花はある』って彼は思うから。でも、もしヒツジが、あの花を食べたら、そのひとにとっては、まるで、全ての星がいきなり消えたみたいだって思われる。そのことは大事なことじゃないっていうの!

 


Mais non ! Mais non ! Je ne crois rien! J'ai répondu n'importe quoi.(7)

私は何も考えちゃいない!さっきは口からでまかせを言ったんだ!

 


Il n'a jamais aimé personne.Il n'a jamais rien fait d'autre que des additions.Et toute la journée il répète comme toi : « Je suis un homme sérieux ! Je suis un homme sérieux ! » et ça le fait gonfler d’orgueil. Mais ce n’est pas un homme, c’est un champi-

gnon !(7)

そのビジネスマンは、一度たりとも人を愛したことがない。計算以外のことは何もしたことがない。(ちなみに、ここのautreという形容詞にdeがついている理由は、不定代名詞のrienに形容詞がつくときには「連結のde」をつけて男性単数形にするという決まりがあるから。)そして一日中あなたみたいに「私はまじめ、私はまじめ」と繰り返していた。そのことは、彼を自尊心でもって肥大させていた。でもそれって人間じゃなくて、ふくれあがったキノコだよ!

 


Je suis née en même temps que le soleil.(8)

あたしは、太陽と同時に生まれたのよ。

 


Je ne suis pas une herbe.(8)

私は雑草なんかじゃなくってよ。

 


Il n'y a pas de tigres sur ma planète.(8)

僕の星にトラはいないよ。

 


Je ne crains rien des tigres, mais j'ai horreur des courants d'air.(8)

あたしトラなんてまったく怖くないわ。でも、風はとってもイヤなの。

 


Ne traîne pas comme ça, c'est agaçant.(9)

そんなふうにグズグズしてちゃダメなのよ。イライラするわね。

 


Au matin du départ, il mit sa planète bien en ordre.(9)

出発の朝、王子さまは、彼の星をきちんと片付けました。

 


– Mais oui, je t’aime, lui dit la fleur. Tu n’en as rien su, par ma faute. Cela n’a aucune importance. Mais tu as été aussi sot que moi. Tâche d’être heureux… Laisse ce globe tranquille. Je n’en veux plus.(9)

ええそうよ。愛してるわ。バラは王子に言った。あなたはそのことに少しも気付かなかった。私のせいでね。どうでもいいことだけど。でも、あなたも、あたしと同じくらいバカだったのよ。どうかお幸せになってね。このガラスの覆いはそのままにしておいて。もうこれ以上望まないわ。

 


Tu as décidé de partir. Va-t'en.(9)

あなたは旅立つと決めたんでしょう。もう行ってちょうだい。

 

 

 

Je n'aime pas condamner à mort.(10)

僕は死刑を宣告するのはイヤです。

 


Il est contraire à l'étiquette de bâiller en présence d'un roi.Je te l'interdit.(10)

国王の前であくびをするのは、礼儀に反することじゃ。あくびするのを禁ずる。

 


Je t'ordonne de m'interroger.(10)

わしに質問をすることをおぬしに命じる。

 


Sur quoi régnez-vous?(10)

どこを治めていらっしゃるのですか?

 


Les étoiles vous obéissent?(10)

星たちは、王様に従うの?

 


Il est bien plus difficile de se juger soi-même que de juger autrui.(10)

他人を裁くよりも、自身を裁くほうがずっと難しいのじゃ。

 


Moi, je puis me juger moi-même n'importe où.(10)

ぼくは、どこにいたって、自分で自分を裁けるさ。

 


Mais il n'y a personne à juger !(10)

でも、裁かなければならない人なんていません!

 


 « Les grandes personnes sont bien étranges », se dit le petit 

prince, en lui-même, durant son voyage.(10)

「大人ってとても奇妙だな」と王子は自分の中で独り言を言いました。旅を続けながら。

 

 

 

Je suis l'homme le plus beau de la planète.(11)

私はこの惑星で一番美男子だ。

 


Je t'admire, mais en quoi cela peut-il bien t'intéresser?(11)

崇拝するよ。でも、どうしてそれが大事なことなの?

 


Que fais-tu là?

Je bois.

Pourquoi bois-tu?

Pour oublier.

Pour oublier quoi?

Pour oublier que j'ai honte.

Honte de quoi?

Honte de boire!(12)

そこでなにしてるの?

酒を飲んでるのさ。

なぜ飲んでるの。

忘れるためさ。

何を忘れるため?

恥ずかしい気持ちを忘れるためさ。

何が恥ずかしいの?

酒を飲んでることがさ!

 


La quatrième planète était celle du businessman.(13)

4番目の星はビジネスマンの星だった。

 

 

 

J'écris sur un petit papier le nombre de mes étoiles.(13)

ちいさな紙切れに、私の星の数を書くのです。

 


Je possède trois volcans que je ramone toutes les semaines. Car je ramone aussi celui qui est éteint.(13)

僕は3つの火山を持っていて、毎週煤払いをするんだ。休火山も同じように煤払いをする必要があるからだよ。

 


Tu n'es pas utile aux étoiles.(13)

あなたは、星々の役には立っていない。

 


Pourquoi vient-tu d'éteindre ton réverbère?

Pourquoi vient-tu de le rallumer?(14)

どうしてたったいま街灯を消したの?

どうして今また街灯をともしたの?

 


La consigne n’a pas changé, dit l’allumeur. C’est bien là le drame ! La planète d’année en année a tourné de plus en plus 

vite, et la consigne n’a pas changé !(14)

指令が変わらなかったんだ、と点灯夫は言った。それこそが悲劇なんだ。星は年々、だんだん速く回転するようになったのに、指令が変わらなかったんだ!

 


C'est le seul qui ne me paraisse pas ridicule.(14)

点灯夫さんだけは、僕にとって、滑稽には思えない人なんだ。

 


Celui-là est le seul dont j'eusse pu faire mon ami.(14)

あの点灯夫さんだけは、友達になれたかもしれないただ1人のひとなのに。(接続法大過去)

 


Quand il allume son réverbère, c’est comme s’il faisait naître 

une étoile de plus, ou une fleur. Quand il éteint son réverbère,

ça endort la fleur ou l’étoile. C’est une occupation très jolie. 

C’est véritablement utile puisque c’est joli.(14)

彼が灯りをつけると、まるで、星や花を一つ新しく生まれさせるみたいだった。彼が灯りを消すと、星や花を眠らせるみたいだった。とてもステキな仕事。ステキだから、本当に役に立つ。

 


Le géographe fait faire une enquête sur la moralité de l'explorateur.(15)

地理学者は、その探検家の品行について調査させるのじゃ。

 


Que les volcans soient éteints ou soient éveillés, ça revient au même pour nous autres.(15)

火山が休火山だろうが活火山だろうが、わしたちにとっては、同じことなのじゃ。

 


Ma fleur est éphémère, se dit le petit prince, et elle n’a que quatre épines pour se défendre contre le monde ! Et je l’ai laissée toute seule chez moi !(15)

僕の花ははかないんだ。王子さまは独り言をいいました。彼女は、世界から自分を守ろうとしても、たった四つのトゲしか持っていない。それなのに、ぼくは彼女を、ぼくの星にひとりで置いてきてしまった!

 


La septième planète fut donc la Terre.(16)

そういうわけで、7つ目の惑星は地球だった。

 

 

 

– Où sont les hommes ? reprit enfin le petit prince. On est 

un peu seul dans le désert…

– On est seul aussi chez les hommes, dit le serpent(17)

「人間たちはどこ?」王子はまた口を開きました。「砂漠は少しさびしいよね。」

ヘビは言いました。「人間たちのところにいたって、やっぱりさびしいさ。」

 


−Je me demande, dit-il, si les étoiles sont éclairées afin 

que chacun puisse un jour retrouver la sienne. Regarde ma planète. Elle est juste au-dessus de nous… Mais comme elle est loin !

– Elle est belle, dit le serpent. Que viens-tu faire ici ?

– J’ai des difficultés avec une fleur, dit le petit prince.

 Ah ! fit le serpent.

Et ils se turent(17)

王子様は言いました。「星たちが輝いているのは、みんながそれぞれ自分の星をいつか見つけられるようにするためかどうかを僕は考えているんだ。僕の星を見てみてよ。僕の星は、僕たちの真上にある。でも、なんて遠いんだろう。」

「綺麗だね。でも、ここへ何しに来たんだい?」ヘビは聞きました。

「ちょっと花とトラブルがあってね」王子様は言いました。

「ああ!」ヘビはそう言いました。

それからふたりは、黙りました。

 

 

 

 


Je puis t'aider un jour si tu regrettes trop ta planète.(17)

もし君がいつか、とても故郷が懐かしくなったら、俺が君を手伝ってやるぜ。

 


Je puis t'emporter plus loin qu'un navire.(17)

俺は君を船よりも遠くへ運んでやるぜ。

 


Celui que je touche, je le rends à la terre dont il est sorti.(17)

俺は俺が触るものを、そいつが出てきた元の大地に返してやるのさ。

 


Les hommes manquent de racine, ça les gêne beaucoup.(18)

人間たちには根がないから、そのことが人間たちをとても困らせるのよ。

 


D'une montagne haute comme celle-ci, j'apercevrai d'un coup toute la planète et toute les hommes.(19)

こんなに高い山からだと、星の全体とすべての人間たちが一目で見渡せるだろうな。

 


Et les hommes manquent d'imagination. Ils répètent ce qu'on leur dit.(19)

おまけに人間には想像力が欠けている。人間たちは、他人が彼らに言ったことを繰り返しているばかりだ。

 


Soyez mes amis, je suis seul.(19)

こだまさん。ぼくの友達になって。ぼくはひとりなんだ。

 

 

 

Puis il se dit encore : « Je me croyais riche d’une fleur unique, et je ne possède qu’une rose ordinaire. Ça et mes trois volcans qui m’arrivent au genou, et dont l’un, peut-être, est éteint pour toujours, ça ne fait pas de moi un bien grand prince… » Et, couché dans l’herbe, il pleura.(20)

 


それから、王子様はこう考えた。「ぼくは、ただひとつの花でもって、自分を豊かだと思っていた。でも、僕が持っているのは、ただのありふれたバラに過ぎなかったんだ。この花と、自分の膝丈までしか達しないような3つの火山ーしかもそのうちのひとつは、多分ずっと休火山のままだーは、僕を立派な王子様にはしてくれない。」王子様は草むらに横たわり、泣きました。

 


C'est alors qu'apparut le renard.(21)

その時だった。キツネが現れたのは。

 


Tu es bien joli.(21)

君はとてもかわいいね。

 


Ma vie est monotone. Je chasse les poules, les hommes me chassent. Toutes les poules se ressemblent, et tous les 

hommes se ressemblent. Je m’ennuie donc un peu. Mais, si tu m’apprivoises, ma vie sera comme ensoleillée. Je connaîtrai un bruit de pas qui sera différent de tous les autres. Les autres pas me font rentrer sous terre. Le tien m’appellera hors du terrier, comme une musique. Et puis regarde ! Tu vois, là-bas, les 

champs de blé ? Je ne mange pas de pain. Le blé pour moi est inutile. Les champs de blé ne me rappellent rien. Et ça, c’est 

triste ! Mais tu as des cheveux couleur d’or. Alors ce sera merveilleux quand tu m’auras apprivoisé ! Le blé, qui est doré, me fera souvenir de toi. Et j’aimerai le bruit du vent dans le blé…(21)

俺の人生はモノトーンさ。俺はニワトリを追いかける。ニワトリを追いかける俺を、人間たちが追いかける。すべてのニワトリたちは相互によく似ている。すべての人間たちも相互によく似ている。だから、俺はちょっと、アンニュイな気分なんだ。でも、もし君が俺をアプリヴォワゼしてくれたなら、俺の白黒の人生に、太陽の光が差し込む。俺は他の足音から、君の足音を聞き分けるようになるだろう。他の足音は、俺を穴ぐらの中に潜り込ませるけれども、君の足音は、まるで音楽のように、俺を穴ぐらの外へと誘い出すのさ。ほら見ろよ。あそこに小麦畑が見えるかい? 俺はパンは喰わねぇ。小麦なんか何の役にも立たねぇ。小麦畑は俺に何も想起させない。悲しいことじゃねぇか。だが、君は黄金の髪の毛をしている。だからこそ、アプリヴォワゼしてくれたなら、小麦畑は素晴らしいものになるんだ。だって、黄金の小麦畑を見たら、次からは君のことを想い出す。小麦畑を撫ぜる風の音が、俺は好きになるのさ。

 


On ne connaît que les choses que l'on apprivoise.(21)

知ることが出来るのは、自分でアプリヴォワゼしたものだけさ。

 


Mais comme il n'existe point de marchands d'amis, les hommes n'ont plus d'amis. Si tu veux un ami, apprivoise-moi!(21)

友達を売っている商人がちっとも存在しないものだから、人間たちにはもう友達がいないのさ。もし君が友達が欲しいなら、僕をアプリヴォワゼしてよ。

 


Qu'est-ce que signifie «apprivoiser» ? dit le Petit prince. (21)

「アプリヴォワゼってどういう意味?」と星の王子さまは言いました。

 


C'est une chose trop oubliée, dit le renard. Ca signifie «créer des liens...»"(21)

キツネは、「それはあまりにも忘れられたことさ。その意味は、絆を作ること、さ。」と言いました。

 


Je ne suis pour toi qu'un renard semblable à cent mille renards. Mais, si tu m'apprivoises, nous aurons besoin l'un de l'autre. Tu seras pour moi unique au monde. Je serai pour toi unique au monde.(21)

俺は君にとって、ほかの10万匹のキツネたちとよく似た、ただのキツネでしかないよね。でも、もし君が俺をアプリヴォワゼしたなら、お互いのことが必要になる。君は僕にとって世界にただひとりだし、僕は君にとって、世界にただひとりだ。

 


Tu es responsable pour toujours de ce que tu as apprivoisé.(21)

君がアプリヴォワゼしたものには、君はずっと責任を持たなくちゃいけないんだ。

 


Si tu veux un ami, apprivoise-moi !

– Que faut-il faire ? dit le petit prince.

– Il faut être très patient, répondit le renard. Tu t’assoiras d’abord un peu loin de moi, comme ça, dans l’herbe. 

Je te regarderai du coin de l’œil et tu ne diras rien. Le langage est source de malentendus. Mais, chaque jour, tu pourras t’asseoir un peu plus près…(21)

「もし友達が欲しいなら、俺をアプリヴォワゼしてよ。」

「でも、どうしたらいいのさ。」王子様は聞いた。

キツネは次のように応えた。「辛抱強くなくちゃならない。まずは、草むらにこんなふうに少し離れて座るんだ。それで、俺が君を、目のすみっこで、見るんだけど、君は何にも言っちゃいけない。ことばは、誤解のみなもとだからだ。それで、日ごと、だんだん君はちょっとずつ、近づいてきてもいいんだ。」

 


Le lendemain revint le petit prince.

– Il eût mieux valu revenir à la même heure, dit le renard. Si tu viens, par exemple, à quatre heures de l’après-midi, dès trois heures je commencerai d’être heureux. Plus l’heure avancera, plus je me sentirai heureux. À quatre heures, déjà, je 

m’agiterai et m’inquiéterai ; je découvrirai le prix du bonheur ! Mais si tu viens n’importe quand, je ne saurai jamais à quelle heure m’habiller le cœur… Il faut des rites.(21)

 


(ここは条件法の過去の第2形が使われていて、これは、接続法の大過去と形が一緒なので、どちらかを見分けなければならない。この場合は、条件法過去である。)

 


次の日、王子様はまたやってきた。

「君は、同じ時間に来た方が良かったのに。」とキツネはいった。「例えばもし君が午後4時に来るとしたら、午後3時になるやいなや、俺は幸せになる。そこから時間が進めば進むほど、それだけますます俺は幸せを感じる。4時になったときには、もうソワソワして、ドキドキになって、そして、幸福の価値がわかる。でも、もし君がランダムな時間に来るなら、いつ心の準備をしていいんだか、俺はわからなくなってしまう。だから儀式が必要なんだよ。」

 

 

 

Ils dansent le jeudi avec les filles du village.(21)

彼らは木曜日には、村娘たちと踊るんだ。

 


Vous êtes belles, mais vous êtes vides.(21)

君たち5000本のバラはたしかに綺麗だ。でも、君たちは空っぽだ。

 


Je vais me promener jusqu'à la vigne.(21)

俺はブドウ畑までぶらぶら散歩するさ。

 


Il est maintenant unique au monde.(21)

彼は今では、この世界でたった一匹のキツネなんだ。

 


Va revoir les roses. Tu comprendras que la tienne est unique au monde.(21)

さあ、さっきの5000本のバラたちのところへ戻ってごらん。君の星のバラは、世界にたったひとつだけだって、きっとわかるよ。

 


Adieu, dit le renard. Voici mon secret. Il est très simple: on ne voit bien qu'avec le cœur. L'essentiel est invisible pour les yeux.(21)

永遠にお別れだな。最後に、これが俺の秘密さ。とてもシンプルなんだ。心で見たときしか、よく見えない。大切なものは、目に見えないんだ。

 


On n'est jamais content là où l'on est.(22)

自分が居るところの場所には誰もが決して満足できないんだ。

 


Et que fait-on de ces cinquante-trois minutes?

On en fait ce que l'on veut.(23)

(そのクスリを飲んだら1週間で53分節約できるとして、)その53分でなにをするの?

その53分間でもって、なんでも好きなことをするのさ。

 


J'ai soif aussi...cherchons un puits...(24)

僕も喉がかわいた。井戸を探しに行こう。

 


Le plus important est invisible.(24)

いちばん大事なものは目に見えないんだ。

 

 

 

Comme ses lèvres entr’ouvertes ébauchaient un demisourire je me dis encore :  « Ce qui m’émeut si fort de ce petit prince endormi, c’est sa fidélité pour une fleur, c’est l’image d’une rose qui rayonne en lui comme la flamme d’une lampe, même quand il dort… » (24)

 


王子様の少し開いた唇がほのかな笑いをかたどったので、私は次のように考えてしまった。「ねむる王子様のなにがこんなに私を感動させるのかといえば、それはある花への忠誠なのだ。一輪のバラのイメージが王子様の中にあって、彼が眠っているときでさえ、ランプの炎のように光を放っている。」

 

 

 

Il n'a jamais ni faim ni soif. Un peu de soleil lui suffit.(24)

彼は空腹も乾きもまったく感じない。わずかな太陽の光で足りるんだ。

 


Il était fatigué. Il s’assit. Je m’assis auprès de lui. Et, après un silence, il dit encore :

– Les étoiles sont belles, à cause d’une fleur que l’on ne voit pas…

Je répondis « bien sûr » et je regardai, sans parler, les plis du sable sous la lune.

– Le désert est beau, ajouta-t-il…

Et c’était vrai. J’ai toujours aimé le désert. On s’assoit sur une dune de sable. On ne voit rien. On n’entend rien. Et cependant quelque chose rayonne en silence…

– Ce qui embellit le désert, dit le petit prince, c’est qu’il cache un puits quelque part.Je fus surpris de comprendre soudain ce mystérieux rayonnement du sable. (24)

王子様は疲れていました。彼は座り込んでいました。だから私も彼のそばに座りました。しばしの沈黙のあと、王子様はまた言いました。

「星々は、美しい。ここからは見えない、一輪のバラのせいで。」

私は応えて言った。「ああ、その通りだ。」そして私は、何も言わず、月の下の砂の起伏を見ていた。

「砂漠は美しい。」王子様は付け加えた。

ああ、その通りだった。私はずっと砂漠が好きだった。砂丘の上に座っている。なにも見えない。なにも聞こえない。しかし、沈黙の中で、何かが輝きを放っている。

王子様がいった。「月夜の砂漠が美しいのは、砂漠がどこかに井戸を隠しているからだよ」

ふいに、あの神秘的な砂の輝きの謎を理解して、私はどきっとした。

 

 

 

 


On risque de pleurer un peu si l'on s'est laissé apprivoiser.(25)

人は、アプリヴォワゼされてしまったら、少し泣きたくなるものなんだ。

 


Cette eau était bien autre chose qu’un aliment. Elle était née de la marche sous les étoiles, du chant de la poulie, de l’effort de mes bras. Elle était bonne pour le cœur, comme un cadeau. (25)

 


この水はただの飲み水とは違うものであった。この水は、星々の下の歩行から、滑車の歌から、自分の腕の努力から、湧き出てきたものだった。この水は贈り物のように、心に沁みいった。

 


Tu as du bon venin ?(26)

君の毒は、よく効く毒かい?

 


Je ne peux pas emporter ce corps-là. C'est trop lourd.(26)

このカラダは持っていけない。重過ぎるんだ。

 


J'aurais l'air d'avoir mal...j'aurais un peu l'air de mourir.(26)

僕は具合がわるいように見えるかもしれない。少し、死んでいるみたいに見えるかもしれない。

 


Ce qui est important, ça ne se voit pas...Si tu aimes une fleur qui se trouve dans une étoile, c'est doux, la nuit, de regarder le ciel.(26)

大事なもの、それは目では見えないんだ。もしある星に咲いている一輪の花が好きになったら、夜空を眺めるのが楽しくなるだろう。

 


Tu ne t'en souviens donc pas ?

Si ! Si ! c'est bien le jour, mais ce n'est pas ici l'endroit.(26)

「なら覚えていないのかい?」

「いいや!覚えてるよ!この日なんだよ。ただ、場所はここじゃないけど。」

 


Il me semblait qu'il coulait verticalement dans un abîme sans que je puisse rien pour le retenir.(26)

王子様が垂直に深淵へと滑り落ちていくように思われて、私には王子様を引き留める手立てがなにもなかった。

 


Il tomba doucement comme tombe un arbre.(26)

一本の木が倒れるように、王子様は倒れた。

 


Les camarades qui m'ont revu ont été bien contents de me revoir vivant.(27)

再会した仲間たちは、僕が生還したのを見て、とても喜んでくれた。

 

 

 

Ne me laissez pas tellement triste : écrivez-moi vite 

qu’il est revenu….(あとがき)

こんなに悲しむ私を放っておかないで。王子様が帰ってきたらすぐに私に手紙を書いてください。

 


Ça c'est, pour moi, le plus beau et le plus triste paysage du monde.(あとがき)

これが、僕にとって、世界で一番美しく、世界で一番悲しい景色なんだ。