aurea mediocritas

日々の雑感や個人的な備忘録

愉快な独語1

【基礎の基礎編】


1.【南ドイツの挨拶】南ドイツでは「Grüß Gott 」(グリュース ゴット)というあいさつが使われている。


2.【アルファベートの読み方注意】V v [ファオ]W w [ヴェー]X x [ィクス]Y y [イュプシロン]Z z [ツェット]の読み方に注意。

 

3.【ウムラウトが打ち込めないとき】ウムラウトは、ドイツ語キーボードではないパソコンで打ち込みたいときにはウムラウトの代わりに「e」を使う。ä=Ae, ö=oe, ü=ueといった具合。たとえば、ドイツ語で「油」はÖlと言うが、これならOelと打ち込めばいい。これでウムラウトが打てないパソコンでも、ドイツ人は理解してくれるらしい。


4.【母音を長く読むか、短く読むかの区別。】このルールは単純で、母音の後ろに子音が1つのときは長く読み、2つ以上続いているときには短く読む。Tal〔タール〕谷、Mann〔マン〕男、Leben〔レーベン〕生命、Heft〔ヘフト〕ノート、Titel〔ティーテル〕タイトル、Tinte〔ティンテ〕インク、Hof〔ホーフ〕庭、Gott〔ゴット〕神、Blume〔ブルーメ〕花、Bus〔ブス〕バス、Bär〔ベーァ〕クマ、Kälte〔ケルテ〕寒さ、Öl〔エール〕油、Löffel〔レッフェル〕スプーン、Hügel〔ヒューゲル〕丘、Hütte〔ヒュッテ〕小屋。【例外】Bahn〔バーン〕鉄道、Uhr〔ウーァ〕時計、Bühne〔ビューネ〕舞台。


5.【二重母音たち】Haar〔ハール〕髪、Tee〔テー〕紅茶、Boot〔ボート〕ボート、Brief〔ブリーフ〕手紙、Liebe〔リーベ〕愛、Mai〔マイ〕5月、Eis〔アイス〕氷、Baum〔バォム〕木、Haus〔ハォス〕家、Europa〔オイローパ〕ヨーロッパ、Gebäude〔ゲボイデ〕建物


6.【yは外来語にしか使われない】Typ〔テュープ〕タイプ、Hysterie〔ヒュステリー〕ヒステリー


7.【子音の読み方】Japan〔ヤーパン〕日本、Juli〔ユーリ〕7月、Vater〔ファーター〕父、Vogel〔フォーゲル〕鳥、Wagen〔ヴァーゲン〕車、Wetter〔ヴェッター〕天気、Zahl〔ツァール〕数、Zoo〔ツォー〕動物園、See〔ゼー〕海、Boden〔ボーデン〕地面、Dame〔ダーメ〕女性、Gott〔ゴット〕神、Gelb〔ゲルプ〕黄色、Kind〔キント〕子供、Tag〔ターク〕日、Bach〔バッハ〕小川、Koch〔コッホ〕コック、Buch〔ブーフ〕本、Bauch〔バオホ〕腹、Teppich〔テピッヒ〕絨毯、Pech〔ペヒ〕災難、Teich〔タイヒ〕池、Milch〔ミルヒ〕ミルク、Fuchs〔フクス〕キツネ、Examen〔エクサーメン〕試験、traurig〔トラォリッヒ〕悲しい、Kopf〔コプフ〕頭、Pferd〔プフェァト〕馬、Quadrat〔クヴァートラート〕正方形、Quelle〔クヴェレ〕泉、Schule〔シューレ〕学校、Schwester〔シュヴェスター〕姉妹、Tasche〔タッシェ〕かばん、Sport〔シュポルト〕スポーツ、Straße〔シュトラーセ〕通り、Deutsch〔ドイチュ〕ドイツの、Stadt〔シュタット〕街、Thema〔テーマ〕テーマ、sechzehnhundertfünfundzwanzig〔ゼヒツェーンフンダート フュンフ ウント ツヴァンツィッヒ〕1625年


8.【Sieはduに変わっていく】初めて出会った人にはSie を使って話をするが、お互いdu で呼び合うように次第になる。ドイツ語ではこれをduzen (ドゥーツェン)するという。フランス語のtutoyer である。


9.【イーレンで終わる動詞の強勢位置】ドイツ語の動詞には-ieren で終わる形のものがあり、studieren (大学で勉強する)などがそう。このタイプの動詞は、外来語を無理やりドイツ語の動詞化したもの。そして、不定詞が-ieren で終わる動詞はアクセントが-ieren の部分にある。


10.【Sieとsieの区別】3人称単数のsie (彼女)や3人称複数のsie(彼ら・彼女ら・それら)のS は文頭に来ない限り小文字だが、敬称2人称のSie については単数・複数にかかわらず、文中でも大文字のS で書き始める。ただし、文頭だと、Sie lernen Deutsch.には、「彼らはドイツ語を勉強する。」と「あなたはドイツ語を勉強する。」、「あたなたちはドイツ語を勉強する。」の3つの意味があることになる。


11.【ミリオンから名詞】tausendは数詞なので小文字だがMillion とBillion は数詞ではなく名詞の扱いになので、大文字で書き始める。


12.【えすとてんてん】ドイツ語の現在人称変化のそれぞれの語尾-e, -st, -t, -en, -t, -en をつなげて読んだ、esttenten (えすとてんてん)という覚え方が有名。


13.【不規則動詞の代表】三大不規則動詞は、seinとhabenとwerdenである。動詞の三基本形だけを列挙しておくと、不定詞―過去基本形―過去分詞の順に、sein - war - gewesen、haben - hatte - gehabt、werden - wurde - gewordenとなる。


14.【文否定か語否定か】nichtは位置によって文の意味が変わってくる。基本的に「語の前に置いた場合はその語を否定し、文末に置けば文全体を否定する」と覚えておけばOK。Ich lerne nicht Deutsch.[私はドイツ語は勉強しない。](他の勉強はする)か、Ich lerne Deutsch nicht.[私はドイツ語を勉強しない。](他の勉強ならするのかどうか分からない)かの違い。なお、Hier steht keine Kirche.[ここには教会は1つも立っていません。]のように、不定冠詞の文を否定するにはnicht は用いず、kein で否定するので注意。


15.【定冠詞類】定冠詞と同様の格変化をするものは、定冠詞類という。これらはすべて定冠詞の代わりに名詞につけ、定冠詞と同様の変化をする。定冠詞類の代表は、dieser(この、このような)、jener(あの、あのような)、aller(すべての)、Jeder(各々の), solcher(そのような)、mancher(かなりの) といったものがある。


16.【不定冠詞類】不定冠詞と同様の格変化をするのが不定冠詞類で、代表は、所有代名詞(所有冠詞と呼ぶほうがよいかも)とkeinである。


17.【unseremはunsremでもよい】ちなみに、所有代名詞のunserem Haus のようにe が2度続いてしまう場合、はじめのe を省略してもよいことになっている。たとえば、unserem Haus ならunsrem Haus としてもいいわけだ。


18.【人称代名詞の2格にほとんど出会わないのは所有代名詞があるから。】人称代名詞の2格には、ほとんど出会わない。「~の」と言うときには所有代名詞を使うから。なので、人称代名詞の2格と出会うことはまずない。所有代名詞は、不定冠詞の代わりに用いるので、変化もこれに準じる。mein, ihr, unser, euerなどがその代表。


19.【sieの3格はihr】Er gibt ihr das Auto.(彼は彼女にその車を渡す。)「~に」という訳になるのでsie の3格が使われ、「車を」だから中性名詞の4格のdas が使われている。ただし、日本語訳がどうなるかを根拠に格を決めるわけではまったくない。


20.【他動詞か自動詞かはどのように決まるのか】ドイツ語の他動詞とは、4格目的語をとる動詞のこと。逆に言えば、3格目的語しかとらない動詞は、英語と違い自動詞となるので気を付ける。たとえばgafallen (~の気に入る)という動詞は、Das Bild gefällt mir sehr.[この絵は私のお気に入りである。]のように、3格の目的語mirをとるが、これは自動詞となる。


21.【ドイツ語の目的語の語順】ドイツ語で目的語を2つとる動詞の場合、その語順に迷うことがある。①両方とも人称代名詞でない名詞なら3格→4格の順番。②片方が人称代名詞ならその人称代名詞→人称代名詞でない名詞の順番。③両方とも人称代名詞なら4格・3格の順番と覚えるとよい。例えば、Ich gebe Daniel das Hemd.[私はダニエルにこのシャツをあげる。]は、①の適用例。Ich gebe ihm das Hemd.[私は彼にこのシャツをあげる。]はihmは人称代名詞の3格で②の適用例。Ich gebe es Daniel.[私はこれをダニエルにあげる。]これもesは人称代名詞の4格で②の適用例。Ich gebe es ihm.[私はこれを彼にあげる。]この場合は③の適用例。どちらも人称代名詞だから4格→3格という順番。


22.【命令文】命令文は基本的に動詞を文頭に持ってきて最後にビテをつける。Geben Sie mir die Armbanduhr, bitte![その腕時計を私に下さい。]ちなみに、Be quietは、Sei ruhig![静かにしろ。]である。ドイツ語の二人称単数duに対する命令文は少し特殊で、eで終わるのが基本なんだが、Iss mehr Obst![もっと果物を食べろ。]のように、不規則な変化をするものもある。


23.【否定疑問文とdoch】Kommt er nicht heute?[彼は今日来ないのですか。]にたいして、Doch, er kommt heute.[いいえ、彼は今日来ます。]か、Nein, er kommt nicht heute.[はい、彼は今日は来ません。]と答える。日本語と違って最初の一言目は内容がどうかで決まるのだ。つまり、実際に彼が来るか来ないかで決まるのだ。否定疑問文に肯定内容で答えるときにはdochを使う。


24.【補足疑問文について】何が(何を)was、どのようにwie、どこでwo、どこからwoher、どこへwohin、いつwann、なぜwarumくらいは覚えておこう。また、疑問詞とはいえ、疑問副詞なのか、疑問代名詞なのかということは当然気にかけねばならない。例文として疑問副詞の例を挙げれば、Wo kaufst du das?[君はどこでそれを買うんだい。]Wann kauft er das?[彼はいつそれを買うのかな。]になる。疑問代名詞なら、Was kaufen Sie?[あなたは何を買うのですか。]になる。ちなみに、補足疑問文と対比されるのが決定疑問文である。


25.【複数形】Alle Menschen werden Brüder.[すべての人々は兄弟となる。]Ich helfe meinen Brüdern.[私は兄弟たちを助ける。]ちなみに、helfen は「~に手を貸す」という意味で、3格目的語をとる。


26.【複数形には5種類ある。】複数形には、変化の仕方に応じて5種類ある。①ゼロ型、②E型、③ER型、④EN型、⑤S型である。①ゼロ型は単複同型ということではなく、語尾が新しくつかないということなので、語幹母音がウムラウトすることはありうる。たとえば、「兄弟」という意味の単数Bruderで、複数 Brüderはそれにあたる。②はE型で、「列車」という意味の単数 Zug、複数 Zügeはそれにあたる。③はER型で、「男」という意味の単数Mann、複数 Männerはそれにあたる。④はEN型で、「教会」という意味の単数 Kirche、複数Kirchenはそれにあたる。⑤はS型で、英語と同じことからもわかる通り、この変化をするものはすべて外来語である。例えば「自動車」という意味の、単数 Auto、複数 Autosはそれにあたる。


27.【複数形の諸特徴】複数形になると、①性の区別は潰されてしまうし、②複数形に不定冠詞のeinが着くことも論理的にない(ただし、複数形に不定冠詞がつくことはないが、不定冠詞類のmeinなどを付けることはある。例えば、Ich esse mittags mit meinen geschätzten Freunden.[私は昼に大切な友人たちと食事をする。]などがある。)。また、③複数形の3格は名詞に-n という語尾がつく。ただし、複数形が-n で終わっていたり、S 型の複数形には3格の-n はつけない。


28.【小慣れた名詞の書き方】ドイツ人がドイツ語の名詞を人に教えるときに、                 

<e.Kirche/n>                  

という書き方をすることがある。これは、最初の「e.」 はKirche (教会)が女性名詞だということを表しており、女性名詞1格の定冠詞die の最後の文字をとった書き方である。もし、男性名詞ならr. 中性名詞ならs. と書く。最後の「/n」 はKirche の複数形はEN型の複数形であるKirchen だということを表している。


29.【男性弱変化名詞】男性名詞の中には、単数1格以外すべての数・格で-(e)n の語尾がつく名詞があり、これが男性弱変化名詞。男性弱変化名詞のStudent (大学生、シュトゥデント)は例えば、3格のとき、Ich helfe dem Studenten.[私はその大学生(単数)を助ける。]というふうに活用する。ちなみに、英語のMr.であるHerrは、微妙に特殊な変化をする男性弱変化名詞の中の例外ということになっている。

 


【前置詞と形容詞編】

 


30.【2格支配の前置詞の例】statt, anstatt(~の代わりに)trotz(~にも関わらず)während(~の間に)wegen(~のために(原因)


31.【2格支配の例文】Wegen des Regens komme ich später.[雨が降っているので、遅れていきます。]Regen は男性名詞で「雨」。später は「あとで」という副詞。文頭から数えて2つ目の単語はdesだが、「Wegen des Regens 」はまとまって1つの意味を為すと考えるので、"動詞が2番目の法則"は崩れていないと考える。


32.【3格支配の前置詞の例】aus(~から)、bei(~のもとで)、mit(~と一緒に)(英語のwith に近い)、nach(~の方へ、~の後で、~によると)、seit(~以来)(英語のsince に近い)、von(~の、~から、~によって)(英語のto に近い)、zu(~へ)


33.【3格支配の例文】Mit ihm fahre ich nach München.[彼と一緒に、私はミュンヘンへ行きます。]fahren は「(乗物に乗って)~へ行く」という動詞。ミュンヘンはドイツ第2の都市。地名や人名には冠詞をつけることはない。ただしミュンヘン3格ではある。Er hat ein Auto aus Italien.[彼はイタリア製の車を持っている。]このItalien は3格。前置詞句は副詞的に使うだけでなく、このように名詞を詳しく説明してやる形容詞的な用法もある。Eine Träne besteht aus 1% Wasser und 99% Gefühlen.(涙は1%の水と99%の感情から成り立っている。)Träne は女性名詞で「涙」、Gefühl は中性名詞で「感情」。「bestehen aus ~」という動詞とセットになっており、水と感情は3格。Gefühlenは、名詞Gefühlの複数3格。


34.【4格支配の前置詞】bis(~まで)、durch(~を通じて)(英語のthrough に近い)、für(~のために)(英語のfor に近い)、gegen(~に逆らって)(英語のagainst に近い)、ohne(~なしで)(英語のwithout に近い)、um(~の回りに)


35.【4格支配の例文】Für das Abitur lerne ich fleißig.[アビトゥーアのために、必死に勉強します。]fleißig は「熱心な」という形容詞だがここでは副詞的に使われている。アビトゥーアは中性名詞で、これはドイツの高校卒業試験で、これに合格すればドイツ国内のどの大学にでも入学できるというもの。


36.【3・4格支配の前置詞】an(~で、へ(接触))、auf(~の上で、へ)、hinter(~の後ろで、へ)、in(~の中で、へ)、neben(~の横で、へ)、über(~の上方で、へ)、unter(~の下で、へ)、vor(~の前で、へ)、zwischen(~の間で、へ)。


37.【3格支配か4格支配かを分ける原理】位置を表すときは3格支配。方向を表すときは4格支配。〔方角だから4格支配〕Ich fahre in die Stadt.[私は町へ行きます。]。〔場所だから3格支配〕In der Stadt kaufe ich eine Tasche.[私は町でバックを買う。]Stadt は女性名詞で「街」。動作の方向を示しているので4格。動作の行われる位置を示しているので3格が使われている。


38.【前置詞のイメージ】an は接触している状態を表す。「壁に絵がかかっている」とか。同じ「上」でもauf はピッタリくっついた鉛直上むき、über は空気を挟んだ上。「机の上にお皿が1枚」ならauf 、「机の上に電灯がぶら下がっている」ならüber。


39.【前置詞の融合形】ある特定の前置詞と、ある特定の定冠詞が連続して使われると、融合形となることがある。たとえば、Ich gehe ins Kino.[私は映画館へ行きます。]となる。an + dem = am。an + das = ans。auf + das = aufs。bei + dem = beim。in + dem = im。in + das = ins。von + dem = vom。zu + dem = zum。zu + der = zur。


40.【ドイツ語の形容詞】英語ではただ名詞の前に置けばよかった形容詞だが、ドイツ語の場合①形容詞が単独で使われる場合(=たとえば不可算名詞で不定冠詞もつかないような場合。これは強変化。強変化はほとんど定冠詞の変化に準ずる。)、②定冠詞とセットで使われる場合(これは弱変化)、③不定冠詞と形容詞とセットで使われる場合で、それぞれ違った変化をする(これは混合変化)。まとめると、①強変化(形容詞+名詞)②弱変化(定冠詞+形容詞+名詞)③ 混合変化(不定冠詞+形容詞+名詞)となる。


41.【形容詞の強変化の例文】Guter Wein ist nicht teuer.[良いワインは高価ではない。]


42.【形容詞の弱変化の例文】Drücken Sie bitte den großen Knopf.[その大きなボタンを押してください。]drücken は他動詞で「~を押す」。groß は「大きい」という形容詞。Knopf は男性名詞で「ボタン」。drücken の4格目的語となっているので男性名詞4格の語尾-en を付けられている。これは、形容詞großが、弱変化している。


43.【形容詞の混合変化の例文】混合変化というのは、不定冠詞と一緒に使われて、基本は弱変化なのだ。しかし、男性1格と中性の1・4格のみ強変化となって、強弱2つの変化が混ざっている様に見えるので「混合変化」と呼ばれている。例文としては、Ich wünsche dir einen guten Tag.[私は君によい1日を望みます。]などがある。wünschen は他動詞で「~を望む」、Tag は男性名詞の「日」である。実は、この文の最後の2語以外を省略しているのがドイツ語のあいさつ、「Guten Tag!」である。そしてこのgutenが混合変化である。他にも、たとえば、Ich esse mittags mit meinen geschätzten Freunden.[私は昼に大切な友人たちと食事をする。]のmittags は副詞で「昼に」、geschätzt は「大切な」という形容詞で混合変化している。ここでは所有代名詞のmein が3格支配の前置詞mitに支配されて3格になっている。geschätzt は複数3格でgeschätzten 、Freundの複数3格の形はFreundenである。


44.【名詞を修飾しない形容詞の用法】形容詞は名詞の前について名詞を修飾する以外にも、Dieses Auto ist sehr gut.[この車はとても良い。]と述語的に用いたり、Dieses Auto fährt schnell.[この車は早く走る。]というように副詞的に用いたりすることもできる。この場合、語尾の変化は必要ない。Für das Abitur lerne ich fleißig.[アビトゥーアのために、必死に勉強します。]もそうで、fleißig は「熱心な」という形容詞だがここでは副詞的に使われていて語尾変化がない。


45.【中性名詞として形容詞を名詞化する】定冠詞を付けて「そのドイツ人」ならder Deutsche やdie Deutsche となる。形容詞が中性名詞として名詞化した場合、「~のもの」や「~のこと」といった意味になる。たとえば、klein を名詞化するとKleines (小さいこと、もの)となる。


46.【ドイツ語の序数は形容詞扱いで格変化する。】1の序数はerst 、2はzweit 、3はdritt。4~19を序数にするには、語尾に-tを付ければよい。6ならsechst 、17ならsiebzehnt。20~は語尾に-st を付ける。20ならzwanzigst 、49ならneunundvierzigst。100も-st なのだが、1XXのXX の部分が19以下なら、語尾は再び-t に戻る。101ならhunderterst 。112ならhundertzwölft。その後120からは、また-st となる。序数は名詞を修飾する場合、形容詞となって、格変化する。「1番目の列車」ならerster Zug といった具合に格変化する。


47.【英語と同じ形の比較級】ドイツ語の比較級は原級 + -er で作る。また、最上級は原級 + -st で作る。変化の仕方は形容詞に準ずる。「絵」は中性名詞でBild なので、「より美しい絵」と言いたいときには、ein schöneres Bildとなる。ここで、erは比較級の語尾で、esが形容詞の語尾である。「最も美しい絵」と言うときはdas schönste Bildとなる。ここで、stは比較級の語尾で、語末のeが形容詞の語尾である。


48.【比較級の副詞的・述語的用法】比較級を副詞的に使うにはなんの語尾もつける必要はない。また、weit や viel を使うとこれを強めることもできる。たとえば、Elis tanzt weit schöner als Hanna.[エリスはハンナよりずっと美しく踊る。]などがある。


49.【最上級はamとenで挟む】最上級の場合はam + -en という形をとる。たとえば、Elis tanzt am schönsten.[エリスは最も美しく踊る。]のように使う。


50.【最上級の述語的用法】最上級の述語的用法には定冠詞 + -e(n) または am + -en という2つの表し方がある。たとえば、①Dieser Mann ist der ältesete in diesem Dorf.[この男はこの村で一番年をとっている。]②Dieser Mann ist am älteseten in diesem Dorf.[この男はこの村で一番年をとっている。]となる。alt は「古い、年寄りの」という意味で、比較級・最上級ではウムラウトする。Dorf は中性名詞で「村」という意味。前者①の文でder が使われているのはMann が男性名詞だからで、もし主語が女性ならdie 、中性ならdas 、複数ならdie と変化する。では、①と②を使いわける原理はいったいなんなのか。最上級の述語的用法の①定冠詞+ -e(n) と②am -sten の違いは、同一物中の比較の場合には必ず②am -sten が用いられ、そうでないときは、もっぱら①なのだ。同一物中の比較というのは、Der Berg ist im Sommer am schönsten.[その山は夏が一番美しい。]のように、比較の対象が別のものでなく、同一物の他の側面であるような場合。


51.【als無しの比較級】「als ~」無しで、付加語として比較級が用いられた場合、「比較的~な」という意味になることがある。たとえば、Der ältere Mann liest ein Buch.[わりと年をとった男が本を読んでいる。]などはそれにあたる。


52.【同等比較の表現】so + 「原級」+ wie A[Aと同じくらい「原級」だ]というものがある。例えば、Er ist so alt wie Hans.[彼はハンスと同じくらいの年齢だ。]


53.【the + 比較級, the + 比較級の構文はドイツ語でどうなるか】je + (比較級A), desto+(またはum so)(比較級B)[A であればあるほどB だ]となる。例えば、Je höher der Berg ist, desto tiefer ist das Tal.(山が高くなればなるほど、谷も深くなる)。ちなみに、tiefというのがtieferの原級である。höherの原級は、hochである。


54.【ますますの表現方法】immer + 比較級。または、比較級 und 比較級で、[ますます~だ]と訳す。たとえば、Er wird immer kluger.[彼はますます賢くなる。]


55.【不規則に変化する比較級たち】原級 - 比較級 -最上級の順に、①gut - besser - best[良い]。②viel - mehr - meist[たくさんの]。③wenig - minder - mindest[少ない:weniger - wenigst という通常変化も可能ではある]。④groß - größer - größt[大きい]。⑤hoch - höher - höchst[高い]がある。文豪ゲーテの最期の言葉はMehr Licht.[もっと光を。]であったらしい。このmehr はviel の比較級で、Licht は中性名詞で「光」である。

 

 

【動詞編】

 


56.【前置詞が最後に来たら分離動詞だと判断せよ】たとえば、Ich rufe Thomas an.[私はトーマスに電話する]は、分離動詞anrufenの文である。an は文末に、後ろにあったrufen は人称変化した形で定動詞の位置にきている。この前側のan のことを「分離前綴り」という。分離前綴りは、前置詞として使えるものが多く、また分離前綴りをとった分離動詞は、通常の動詞として別の意味を持つものとして機能する。例を挙げれば、auf|stehen [起きる]やaus|gehen[外出する] などは分離動詞のひとつ。通常、前置詞は名詞の「前」に「置」くものなので、文末にあったら、「これは分離動詞だな。」と思い、定動詞とセットにして意味を考えて、分離動詞として辞書を引くのでなければならない。


57.【非分離動詞】分離動詞に似ているのに分離動詞ではない動詞で、非分離動詞というのがある。(これは、分離動詞ではないのだから普通の動詞と同じものかと思うかもしれないがそうではない。)これは、前綴りを持っていながらも、分離しない動詞のことで、この前綴りを「非分離前綴り」という。代表的な「非分離前綴り」はbe-, emp-, ent-, er-, ge-, ver-, zer-などが挙げられる。この中からbe- という前綴りを持っている、beginnen (~4格を始める)を使って例文を作ってみると、Wann beginnt die Party?[パーティーはいつ始まりますか。]となる。


58.【分離動詞と非分離動詞の違いはどういう実際的な違いになるのか】分離動詞を過去分詞にするときはge- が前綴りの後ろに入る。たとえば、分離動詞のan|machen (開ける)の過去分詞ならangemacht と、前綴りan の後ろにge- が置かれる。しかし、非分離動詞や-ieren で終わる動詞をその代表とするような、アクセントが第一音節にない動詞の場合は、過去分詞にはge- を付けず、単に語幹+t の形となる。たとえば、studieren の過去分詞はstudiert になるし、非分離動詞のbesuchen(訪問する)ならbesucht となるわけである。例文としては、Ich machte die Tür an.(私はそのドアを開けた。)などがある。


59.【非分離前綴りにはアクセントを置かない】非分離動詞について注意が必要なのは、非分離前綴りにはアクセントを置かないということ。ドイツ語は第一音節にアクセントを置くのが基本だが、上のbeginnen ならば「gi 」 にアクセントを置いて発音する。


60.【分離動詞の例文】分離動詞を使おう。Ich gehe um acht Uhr aus.[私は8時に外出します。]Ich gehe gegen 15 Uhr aus.[私は15時に外出します。]というふうに使うのである。


61.【時間の表現】ドイツ語で「今何時ですか?」と聞く聞き方は2つある。Wie spät ist es?[今何時ですか。]と、Wie viel Uhr ist es?[今何時ですか。]である。そしてこの答え方としてEs ist X Uhr.[今はX時です。]がある。Xの部分には数字を入れるのだが、「~時に」というのは、um ~ Uhrで、「~時ごろ」ならgegen ~ Uhrとなる。ドイツ語では12以下の数ならば文字で、13以上ならば数字で表すのが普通らしい。文字で表すと非常に長いからだ。


62.【時間表現のいろいろ】13:16は「dreizehn Uhr sechzehn」。18:22は「achtzehn Uhr zweiundzwanzig」。3:30はhalb vier (半分4時)。6:30はhalb sieben (半分7時)。6:08はacht nach sechs (6時の8分後)。7:56はvier vor acht (8時の4分前)。3:34はvier nach halb vier (3時半の4分後)。3:28はzwei vor halb vier (3時半の2分前)。7:15は、①fünfzehn nach sieben (7時の15分後)でもいいし、②Viertel nach sieben (7時の4分の1時間後)でもいいし、③Viertel acht (4分の1だけ8時)でもいい。7:45は、①fünfzehn vor acht (8時の15分前)でもいいし、②Viertel vor acht (8時の4分の1時間前)でもいいし、③drei Viertel acht (4分の3だけ8時)でもいい。日本語では時間を「○○:○○」と書き表す場合があるが、ドイツ語では、「○○. ○○Uhr 」と書く。


63.【日付について】ドイツ語で「~日に」というのは「am ~.」と表す。このピリオドは大事である。4日ならam 4. となる。この数は読むときには序数扱いになるので、読み方は「アム フィーアテン」となる。つまり、ピリオドをそのまま「テン」と読めることになる。「○○年○○月○○日に」は日本語の逆で、「am 4. April 1998 」のように日付から月で、最後に年号へという順番で表現してゆく。


64.【非人称のEs】es を使った重要表現に「es gibt 4格」(4格がある、いる)がある。たとえば、Es gibt hier einen Hund.[ここに1匹の犬がいる。]となる。


65.【動詞の過去形と過去分詞について】過去形は、語幹+teでつくる。過去分詞は、ge+語幹+tでつくる。過去形は、は動詞の語幹に-te をつけるだけで基本的には完成。たとえば、lernen の過去形ならlernte となる。ただし、語幹が-t や-d で終わる動詞なら、-eteと、e を付け加えることになり、arbeiten ならarbeitete という形になる。過去分詞は語幹をge- と-t でサンドイッチすれば基本的には完成。lernen ならgelernt という形になるわけだ。そして、不定詞、過去基本形、過去分詞の3つを、動詞の三基本形という。辞書を引くときはこれらを一緒に覚えるとよい。しかし、この動詞の過去形というのは、現代ドイツ語ではあまり使われない傾向が生まれている。なぜなら、完了形がその使用領域を拡大しつつあるからである。英語では、過去形を使うか完了形を使うかというのは迷いどころだったが、ドイツ語では過去のことを表すなら基本的に完了形を用いる。では過去形はというと、物語的な場面(小説など)でのみ使われ、日常会話では専ら完了形を使うのだ。これはフランス語の単純過去の辿った道と同じである。(ただしsein, haben, werden, 話法の助動詞だけは、日常会話でも過去形を使うことが圧倒的に多くなるのだが。)


66.【未来形は基本的に未来のことではなく推量を表す。】ドイツ語で未来形は、werden + 不定詞で作ることができる。しかし、未来形とは名ばかりで、Er wird im Büro sein.[彼はオフィスにいるのだろう。]のように、未来のことでなく「推量」を示すことが多い。というか、確定した未来だったら、むしろ現在形を使うのである。たとえば、Ich fahre morgen ab.[私は明日出発します]のように使うのだ。分離動詞のab|fahren (出発する)を使った例文。ここでは、明日の出発は話者にとって、「もう揺るがない確定した未来」なので、現在形を使って表現しているのだ。これが、まだ確実な証拠がなく、推量に過ぎないときには逆に未来形になるのである。たとえば、Er wird morgen abfahren.[彼は明日出発するのだろう。]のように。しかし、確実な未来のときは「現在形」で、不確実な推量のときは「未来形」になるというのはなんとも奇妙だが、文法用語の形の問題と実質上の問題は食い違うことがあるのだ。


67.【完了形の例文】①Ich habe ein Brot gegessen.[私はパンを1つ食べました。]②Mit ihr hat Hans getanzt.[ハンスは彼女と踊りました。]これらが基本的な完了形の例文である。しかし、分離動詞の完了形だと、③Ich habe das Fenster aufgemacht.[私は窓を開けました。]のようになる。①のgegessen はessen(食べる)の過去分詞である。③のFenster は中性名詞で「窓」で4格になっており、auf|machen は「4格を開ける」という意味。完了の助動詞のhabenやseinは主語に合わせて人称変化する。次に、sein を使った例文は以下の通り。④Ich bin gestern nach München gefahren.[私は昨日ミュンヘンへ行きました。]⑤Bismarck ist 1898 gestorben.[ビスマルクは1898年に亡くなりました。]⑥Sind Sie dort Hanna begegnet?[あなたはそこでハンナに出会ったのですか。]などである。④のgefahren はfahren の過去分詞で、場所の移動なのでsein を使っている。英語では絶対にやってはいけなかったはずの、完了形と時を表す副詞である「昨日(gestern )」を同時に使うことも、ドイツ語では問題なく行える。⑤のgestorben はsterben(死ぬ)の過去分詞。状態の変化なので同様にsein を使う。⑥のように、完了形の文を疑問文にするときは、定動詞の位置にある、完了の助動詞を文頭に持っていく。なお、begegnen (3格に出会う)は例外的にsein を用いる。dortは、「そこで」という意味の副詞。


68.【haben支配とsein支配の例外】ところで、完了の助動詞にhaben を用いる動詞を「haben 支配の動詞」、sein を用いるものを「sein 支配の動詞」という。基本的に、すべての他動詞とほとんどの自動詞はhabenが助動詞になり、場所の移動や状態の変化を表す自動詞はsein を助動詞に用いる。しかし、この基本ルールの例外として、seinと、 bleiben(とどまる)と、 begegnen(3格に出会う)の3つの動詞には助動詞にsein を用いる。また、「始める」(an|fangen など)とか、「終わる」(beenden など)という意味を持つ動詞は、状態の変化ではあるけれども、助動詞にhaben を用いる。


69.【未来完了形は「過去に対する推測」になる。】未来完了形は「~したのだろう、~だったのだろう」という、過去に対する推測を表現する。未来が推測の意味になってしまっていたことに注意しよう。例えばEr ist zu Hause gewesen.[彼は家にいた。]という普通の完了形の文があったとしよう。gewesenは、seinの過去分詞であり、sein支配の動詞であるから助動詞はseinになっている。この完了形の例文に未来形の要素を加え、未来完了形を作ってやると、未来形の作り方はwerden + 不定詞だから、Er wird zu Hause gewesen sein.[彼は家にいたのだろう。]となる。定動詞の位置に未来形の助動詞werden の主語に合わせた形、wird を持ってきてやり、すでにその位置にあったist は、文末へ移動し、「werden + 不定詞」の「不定詞」の部分に変化してseinに戻ったのである。これで未来完了形の完成。ところで、zu Hause は「家に、家で」という意味の熟語であるが、zu は3格支配の前置詞でHaus は中性名詞の「家」であるから、最後のeが奇妙である。このとき、最後の"e" はなんだろうか。これは昔3格の男性・中性名詞に"e" という語尾をつけていた時代のなごりであり、現在でも男性・中性名詞の2格に"s" を付けるのと似たような現象が昔は3格でも起こっていたということを示しているのだ。熟語となって化石化したせいでここにeが残っているのである。このような名残りの現象は、これのほかに、nach Hause (家へ)という熟語などにも見ることができる。


70.【再帰動詞】再帰動詞の基本は、Ich setze mich auf der Bank.[私はベンチに座る。]などの文である。このBank は女性名詞だと「ベンチ」で中性名詞でBank だと「銀行」の意味になる。また、3・4格支配の前置詞auf の目的語は、ここではイスに座るという動作の方向を表しているので、4格が使われていることに注意。このとき、setzen は通常「4格を座らせる」という意味の他動詞で、ここは再起動詞なので、「私を座らせる」=「座る」の意味になっている。再帰動詞とともに用いられる、この例文でいうところのmich のような代名詞を、再帰代名詞と呼ぶ。再帰代名詞は、1人称と親称2人称の場合は人称代名詞と同じだが、3人称と敬称2人称の場合はsich という語を用いる。これは、フランス語のヴェルブ・プロノミナルにおけるseの振る舞い方と似ている。具体的にいうと、Du setzt dich auf den Stuhl.[君はイスに座る。]Er setzt sich auf den Stuhl.[彼はイスに座る。]Sie setzen sich auf den Stuhl.[あなたはイスに座る。]のようになり、再帰代名詞は親称2人称du では人称代名詞と同じdich 、3人称と敬称2人称ではsich が使われているのが分かるだろう。


71.【再帰動詞の前置詞句とセットの用法。】Ich interessiere mich für Germanistik.[私はドイツ語学・文学に興味が有ります。]この例文のように、再帰動詞の中には前置詞とともに意味を形成するものがある。ここでは、[sichの4格] + [für +4格名詞] interessieren という組み合わせで使われて、「~に興味がある」という意味になっている。fürは4格支配の前置詞である。他にも、[sichの4格] + [auf~4格] freuenで「~を楽しみにする」とか、[sichの4格] + [über ~4格] freuen「~を喜ぶ」などがあり、このふたつは混同されやすい。ごく稀に4格ではなく3格の再帰代名詞をとる再帰動詞も存在するが、再起代名詞は、4格のほうが多い。


72.【sichの絡んだ熟語】an sich[それ自体]、für sich[ひとりで]、bei sich sein[正気である]、außer sich sein[我を忘れる]。


73.【sichの単独の意味】sich を単独で使うと、「お互いに」という意味になる。たとえば、Sie schlugen sich.[彼らはお互いに殴りあった。]ここでのsich はアイナンダーeinander[お互いに]と同じ意味を持っている。フランス語にも再帰動詞には相互的用法があった。