「悟性」と訳されるドイツ語のフェアシュタントは、フランス語のアンタンドマン、ラテン語のインテレクトゥス、ギリシア語のヌースである。これはかつて、最上位の認識能力とされ、日本語ではその意味においては「知性」と表記される。
他方、「理性」と日本語に訳されるドイツ語のフェアヌンフトは、フランス語のレゾン、ラテン語のラティオー、ギリシア語のロゴスである。
カント以降においては、「悟性(フェアシュタント)」は「理性(フェアヌンフト)」よりも下位に置かれ、理性の助けがなければ未完成的で有限なものとされ、悟性のさらに下に感性(センスス)が置かれた。
ドイツ観念論におけるインテレクトゥスとラティオの逆転はカントによるものだ。なぜなら、カントは、世界そのものを知的に直観する能力は人間にはないという有限主義の立場に立ったからである。物自体は不可知なのである。
まとめると、①インテレクトゥス(知性=ヌース)→②ラティオ(理性=ロゴス)→③センスス(感性)というのがカント以前であり、
①ラティオ(理性)→②インテレクトゥス(悟性)→③センスス(感性)というのがカント以降の序列なのである。